それは2007年の初夏、オルガ二ストの木島美紗子先生の1本の電話がそもそもの始まりでした。
池長カトリック大阪大司教様が鳴門の大塚美術館に完成したバチカン・システィーナ礼拝堂のミケランジェロの天井画の複製を祝別に行かれる、その祝別式で典礼聖歌を歌い、同時に宗教曲のミニコンサートをするメンバーを集めている、指揮は世界的に活躍されている合唱指揮者の松原千振先生が引き受けて下さった。事前の練習は2回…。
たった1回のミニコンサートのために一晩で集められた13人ほどの即席混声合唱団は、コール・グランツという仮の名前で無事演奏会を終え、記念写真を撮り、松原先生を含め皆で食事に出かけ…解散!のはずが結局そのまま、継続して活動していくことになりました。
アカペラの宗教曲に限定して演奏していくなら、という条件で指揮・指導を引き受けてくださった松原先生にプサルムス(ラテン語で旧約聖書の『詩編』の意味)と命名していただき、2007年の9月から定期練習を開始しました。
以来、メンバーの入れ替わりはありましたが、月に1回の定期練習を大切に、休むことなく歩みを続けています。
♪ミサ曲を年に1曲ずつ仕上げています。
昨年まで、以下の曲をとりあげました。
パレストリーナ(G.P.Palestrina 1524年~1594年)
“Missa Brevis”,“Missa Lauda Sion”,“Missa Regina Caeli”,“Missa de Beata Virgine”,
“Missa Aeterna Christi munera”,
“Missa Dies Sanctificatus”,“Missa Pater Noster”, “Missa O Magnum Mysterium“,
ヴィクトリア(T.L. de Victoria 1548年~1611年)
“Missa O Magnum Mysterium”
ペニャローザ(F. de Peñalosa 1470年~1528年)
“Missa Ave Maria”
高田三郎(1913年~2000年)
“やまとのささげうた”
♪さまざまな時代の作曲家による主にラテン語による宗教モテット 例えば…
ジョスカン・デ・プレ(J.des Pres 1440年~1521年)“ Ave Maria .... Virgo serena ”
ウィラールト(A.Willaert 1490年頃 - 1562年 )“O magnum mysterium”,“Pater Noster”
パレストリーナ(G.P.Palestrina 1524年~1594年)“Sicut Cervus”,“Super Flumina”
ゲレロ (F.Guerrero 1527年~1599年) “Rorate Caeli”
ヴィクトリア(T.L. de Victoria 1548年~1611年) “Ne Timeas Maria”
マレンツィオ Luca Marenzio(1553年頃~1599年) “Hodie Christus Natus Est”
アイヒンガー(G.Aichinger 1564年~1628年)“Ave Maria ”
コダーイ(Z.Kodaly 1882年~1967年)“Veni, veni Emmanuel”
バルドス(L.Bardos 1899年~1986年) “Ave Maris Stella”
♪高田三郎の典礼聖歌や賛歌 高田三郎(1913年~2000年)氏が
日本のカトリック教会の典礼のために作曲した典礼聖歌や賛歌の混声合唱版を歌っていくことも
私たちの活動の柱の一つです。
私たちの定期練習は月に1回だけ、日曜日の夕方5時から8時半までです。
海外、国内を問わず、多くの演奏活動、研究・執筆活動に超多忙である松原先生のご予定に合わせて、日にちは毎月かわります。
たとえば、場合によってはある月の第1日曜日から次の月の第4日曜日まで2か月近く、練習の間があいてしまうこともあるので、1回1回の練習がとても貴重です。
また、その間を埋める形で、ヴォイストレーニングや団員練習を入れるようにしています。
練習曲目の柱のひとつである外国語の宗教曲は、私たちは5時から事前練習として、その日やりそうな場所を皆で予習しています。
先生はいつも決まって6時ちょっと前にいらっしゃるのですが、私たちが予想していた曲を練習されるとは限らず、このあたりの当たり外れが、結構楽しみだったりします。
年間を通して練習しているミサ曲も、順番にやっていくとは限らず、不意打ちはしょっちゅう。
『家でCredoを必死で練習してきたのに、Sanctusか~』と、内心大いに焦りつつ、平然をよそおって必死に楽譜にくらいつく。
また先生が持ってきてくださる新曲のコピーが当日配られ、いきなり、4声合わせてラテン語歌詞付きで歌うのに、たじろいではいられません。気分は昔懐かし『初見視唱』の試験…。
先生はひたすら音叉で譜面台をカンカンとたたいてテンポを出しつつ音楽を前へと進めていかれますから躊躇している間はありません。
無伴奏で歌っているので、自分のパートの音が取れなくなったときには黙るしかない (落ちた…トホホ)。
努力次第、という本当の意味の厳しさはあります。
練習の後半は、大体いつも高田三郎先生の「混声合唱のための典礼聖歌」をやります。
これもまた、曲集の中のどの曲をするかは当日のお楽しみ(?)・・・ほとんどの団員にとっては毎回が初見です。
典礼聖歌はミサで一般信徒が誰でも歌えるよう、また詩編の言葉や典礼文が生きるよう作曲されていますから、メロディーは自然で、ユニソンで歌う限り歌いにくいということはありません。
しかし混声合唱になると、初めて気づくのは、そのハーモニーの独自性。
ぶつかり合う響きや、とりにくい音程、そして、個性的な和音進行。
しかしそこにこそ高田先生の深い意図と緻密な構成があります。
その極意(?)を細かく解読、解説しながら、松原先生は小節ごと、拍ごとのハーモニーを厳密に表現することを求められます。
一度ざっと合わせた後、「では少し丁寧にやっていきましょう」とおっしゃると、パート別に1声だったり、さまざまな組み合わせの2声だったり。
あるパートだけ部分的に何回もやり直しが入る時は、当人は身が縮む思いがするのですが、先生は何がまずいかをあまり言葉でおっしゃらず、ご自分が歌ってみて下さり、要求を理解しろ、という感じ…文字通りの口移しですが、私たちの方は「何がまずいのだろう?」「どう歌ったらよいのだろう?」と必死で聴く耳を鍛えられます。
不必要なアクセントだったり、フレーズの入り方やおさめ方、でこぼこだったり、ピッチのあいまいさだったり、悪いところに気付くことを促されているという感じです。
こう書くと、どんなにピリピリとした厳しい練習か…と思われるかもしれませんが、松原先生の口調はあくまで淡々と穏やかで、しかも大人のユーモアがあり、絶妙のタイミングでのギャグに爆笑あり、実に楽しい練習です。
また折に触れ、かつて松原先生が音大生で高田三郎ゼミに所属していらした時代、高田先生が典礼聖歌の作曲を進めておられた頃の貴重な「秘話」を、おもしろおかしく披露してくださったりもします。
しかしその穏やかさの中の鋭い指摘を感じるか否か、また練習を真に楽しめるか否かは私たち次第、練習外での各人の努力次第、という本当の意味の厳しさはあります。
松原先生が求めておられることを、技術的にどのように実現したらよいか、戸惑うことも多いのですが、そこを大いに補ってくださるのが、ヴォイストレーナーの伴先生です。
年に7,8回のヴォイストレーニングですが、松原先生の練習に先立って1時間行われる時と、別日程で2時間みっちりの時があります。
だいたいは現在練習中の曲を使って、発声や技術的な観点からご指導いただいています。
また、パート別(特にソプラノ)の特訓などもあります。
歌う側の立場から、指揮者の要求にどのように応えたらいいか、技術的にも心構えとしても、プロとしての貴重な経験をおしみなく伝授していただいています。
団では、団員の自宅での練習の助けとなるように、練習時の録音をインターネットで団員限定で配信しています。
月に1度しかない本練習を補うためのマル秘ツールです。
これを聴きつつ、後から「あ~あの時、先生がおっしゃりたかったことは、こういうことだ」とあらためて気がつくことも多いです。
もちろん、自分の声が飛び出て聞こえて、一人赤面することもしょっちゅうです。
しかし、この「恥」を乗り越えてこそ、月にたった一度の練習が次に向けて 生きてくるのです。
わたしたち単独での演奏会は毎年クリスマスのシーズンにカトリック教会の聖堂をお借りして行っています。(甲子園教会、夙川教会)
演奏会のプログラムは、カトリックの典礼暦に合わせた選曲でのミサ形式で行っています。
ミサ形式というのは、ミサ曲を構成する5曲(Kyrie, Gloria, Credo, Sanctus-Benedictus, Agnus Dei)を一般のコンサートのように続けて演奏するのではなく、実際のミサの通りに配置し、前後にモテットや詩編などの典礼聖歌を入れて構成することです。
本当のミサではありませんが、ミサの流れを追ったコンサートです。
これまでの演奏会の演奏曲目はこちらのページをご覧下さい。